そして日常へ
どこか夢を見ている様な、なんとも覚束ない感覚のまま、私は通夜を過ごし、そのまま葬儀に参列した
けれど、今はあの不思議な夜の延長線で、ふと気がつけば、何事も無い日常へと立ち返る
私にはその不確かな感覚が拭えなかった
そんな私とは裏腹に、葬儀は予定通り、滞りなく進行していった
そして出棺が終わり、参列者は各々、散っていく
それを尻目に、私は一人、早々に自宅へと向かう
ほんの数日の事が、とても長く感じ、心身共に疲れ果ててしまった
「帰って寝よう…」
私は無心で歩き、自宅へと帰り着くと、衣類を脱ぎ捨て、そのまま横になった
時刻はまだ昼を回った頃だろう
けれど、それを確認するのも煩わしい
殆ど徹夜明けだったこともあり、私の意識はぷつりと切れた
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目が覚めると、陽は既に落ち、外はすっかり暗くなっていた
私は起き上がると、シャワーを浴びようと、浴室へと向かった
立ち上がった時にも感じた事ではあるが、身体が妙に重い
どうしたものかと思案してみると、原因はすぐに思い当たった
今朝から何も食べていない
シャワーを浴び、服を着ると、何か食べ物がなかったかと台所を探してみたが、インスタントに食べれる物はなく、今から作るのは面倒だと思い、外食する事にした
「今は何時だろう…?」
外食するならば時間は重要だと、部屋の時計をみるが、即座に機能していない事を思いだした
「電池変えないと…」
大概は手元に携帯電話があるため、壁掛け時計が止まっていたところで特に不都合はない
とは言え、今の様に、ふとした瞬間には不便だ
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