~Epilogue ~

「…それでは、失礼します」

一礼して、私は老人宅を後にする

時々ではあるが、こうして線香をあげにくる

私にとって、あの出来事は自分の生き方を考え直すきっかけになったようだった

あれ程囚われていた仕事を辞め、現在は求職中だ

とは言え、それなりに貯えもあり、さほど焦ってはいない

焦って仕事を探すよりも、自分のやりたい事を、また、自分が必要とされる職を見つける事が重要だった

勿論、いつまでも遊んでいる訳にもいかないのも事実ではあるが…

そう言った実情もあり、私は図書館へと出向く事が増えた

今もその出掛けである

「まだまだ日中は暑いね…」

目的地へと着くと、そのすぐ隣にある喫茶店へと入る

店内はひんやりと涼しく、毎度、汗が引くまで少し休ませて貰っている

いつもの様に、冷たい紅茶を注文すると、鞄から本を取り出す

前回、借りて帰ったのだが、色々とタイミングが合わずに結局、まだ全く読んでいない

「今日が返却日だからね、読んでおかないと…」

最後まで読むわけではなく、気になる箇所だけ読めれば良い

そう思ってはいたが、考えが甘かった

気付けば注文した紅茶はテーブルに置かれており、氷もとけ、すっかり温くなっていた

「ふぅ…」

目的の箇所を読み終え一息着くと、温くなった紅茶を一気に飲み干した

「思ったより時間かかったなあ…」

会計を済ますと、図書館へと向かった

借りていた本を返金する為、カウンターに行く

そのすぐ横には返却されたばかりの本が棚に戻されるのを待っている