~Epilogue ~
何気なくそれらを眺めていると、一冊の本が目に留まる
「花言葉集…か…」
殆ど無意識に手にとってみると、カウンターから声が掛かる
「借りられますか?」
特にその気はなかったが、突然の言葉に、つい、「はい」と返事をし、借り返る事になった
「まあ、いっか…」
内容は確認してもいないが、気になる事があったのも確かだ
せっかく借りる事になったのだから、その場で読む必要もないかと、鞄へしまう
「さてと…」
今日は返却が目的だった為、用件は終わった
このまま帰るのも味気無い気はするが、特に思い付く事もなく、そのまま帰路へ着く
部屋へ戻ると、老人の手紙を取り出した
あの日の事はまだ鮮明に覚えている
窓辺の椅子に座り、手紙を読み返す
やはり、未だに切ない想いに駆られてしまうが、その一節を声にだして読み上げてみる
「だから、迎えが来る前に、この花を手向けとして、どうしても手に入れたかった
…花言葉、知っとるかい?」
そこまで読むと、一息ついた
「桔梗の花言葉…か…」
私は手紙を仕舞うと先程、借りてきた花言葉の本を開く
「え…、と、き、き…、桔梗、あ、あった」
そのページを開き、花言葉を探す
「………」
その言葉を目にした瞬間、私は言いようのない想いに囚われた
悲しいとも切ないともつかない、けれど何処か温かな、優しい気持ちの様な…
不思議な感覚のまま、ただ呆然とその文字を見詰め続けてしまった
手紙によると、あの老人がこの花を求めたのは、先立った伴侶に対する手向けであり、また、最後を看取る事ができなかった事への精一杯の謝罪だった
「届くといいな…、いや…、うん、きっと届いたよ…」
私は願う様な、祈る様な、そんな気持ちでそっと本を閉じた
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